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唐突に書きたくなった、にんたまパロ!!
銀土で、うっすらと高桂高。
おそらくシリアス。むしろ暗。
どうして、こんな残酷なことをするんだろう。
六年間、たくさんの友達とたくさんの時間を過ごし、たくさんのことを学んでいく過程は楽しくて、自分が豊かになっていくのを感じる。
だが、豊かになっていく分、この幸せな時間の終わりに近づいているんだと思うと、もっと子供で居たいと願ってしまうのだ。
子供でいれば、もっとここに居られる?バカやって先生に怒られて、罰を受けて、それでもまたやっぱり楽しくてついバカをやる。
そんなくだらない、だがなにものにも代えられない時間を失うことは、耐えられないのに。






「もうすぐ卒業じゃね?」
「そうだな」

いつものメンバーが俺の部屋でゆっくりくつろいでいる中、隣で寝そべってクナイを手で遊ばせている銀時が、何でもないことのように放った言葉に俺は頷いた。
入学してから卒業するまでの六年間を、生徒は寮で過ごす。部屋は二人部屋で、俺はこの銀時と同室だった。
壁にもたれて本を読んでいた俺の足先付近で転がっていた高杉が、いつもの不敵な笑みを浮かべて、肘をついて上体を起こす。

「俺が卒業しちまえば、どれだけのくのいち泣かせるかねェ…」
「心配せずとも、すぐに貴様のことなど誰しもが忘れ去るだろう」
「テメーがな、ヅラ」
「ヅラではない、桂だ」

毎日片付けもせずに敷きっぱなしの布団の上で何故か編み物をしている桂と高杉は隣の部屋で同学年だ。
爆薬を扱うのが得意な桂と、くのいちに人気の高い高杉は口喧嘩ばっかりだが比較的仲は良いらしい。
またくだらない喧嘩を始めた二人の口論をぼうっと聞いていると、何となく入学したての頃を思い出した。六年前、互いに顔を合わせた時のことを。

「俺、パッと見でお前とは合わねーだろうと思ったがな」

隣で器用にクナイを玩具にする銀時を横目で見ながら、唐突にそんな話を始めた。脈略のない会話だというのに、銀時はまるで俺の心を見透かしたように微笑んだ。

「俺も」

いつだって銀時は俺のことなんざお見通しだった。そりゃ六年間も傍に居ればそうなる。互いに互いが空気のような存在で、隣に居るのが当然、だが居ないと一番困る。そんな存在だった。
ずっと好きだった。恋だの愛だのではなく、そんなモンを超えて銀時が大事で大切で、唯一で至上で、コイツと居たから今の俺が存在すると言っても過言ではない。
まるで俺の半身のような相棒。

「…卒業だなァ」

本当にしみじみと高杉が呟くモンだから、何だか可笑しくて俺は噴き出した。高杉みたいなキャラが突然そんな声を出しても、感慨深くもなんともない。
高杉は俺を睨んだが、桂がそれを遮るように編み棒を置いた。

「卒業すれば、俺達はどうなるのだろうな」
「あのホラ、よく学園に遊びに来るフリーの忍者みてェな?仕事バリバリしなけりゃならねェんだろうな」
「もう自活しねーと、だからな」

いかにも面倒そうに銀時がため息を吐くのに、俺も暗い気持ちになりながら答えた。
もう美味いメシを作ってくれる食堂のおばちゃんもいない。優しく厳しく指導してくれる先生もいない。こうやってグダグダと友達と過ごす時間も、もう残り僅かだ。
卒業すればみんな、バラバラの場所で色んな仕事をして、それは簡単な任務から命に関わることまで。
俺達がこの居心地の良い学園を出て、次に再会するのは平和な町中か、命奪い合う戦場か。

「…戦場で会っても、容赦しねェからな、土方」
「高杉、なんで俺限定なのか理由を聞かせてもらおうか」
「お前は天性の不運だからなァ。ヅラや銀時より戦場で会う機会が多そうな気がしてよォ」
「あ、それ俺も賛成」
「俺もだな」
「お前ら…!」

順番に挙手する銀時と桂に怒鳴りたいが、確かに今まで俺の奇妙なまでの運のなさが原因で迷惑をかけている。しかも多大に。
深く息を吐くことで苛立ちを解消し、落着きを取り戻したところで俺は重要なことを思い出し慌てて立ち上がった。

「っやべ!委員会の招集かけてたの忘れてた!」
「ああ、俺もだったな」
「あ、俺もだ」
「俺ァ覚えてたがな…」
「「「言えよ!!!」」」

最高学年で居られるのも、あとわずか。後輩に残せるものは、あと一体どれだけあるだろう。
俺達三人にツッコまれて、高杉も渋々と立ち上がる。それを待たずして部屋を出ようとした時、今朝銀時が転んで散らかしたマーブルチョコレートの一つを踏んでしまい、俺はバランスを崩した。

「ッ…!」
「おっと」

二日に一回は転ぶ俺を、いつも抱きとめてくれたのは銀時の長くしなやかな腕。
実習中も、授業中も、休みの日も、様々な不運に見舞われた俺をフォローしてくれた銀時に、俺はどんな形で礼を表せるだろう。
一度くらい怒ったっていい位に俺のとばっちりを受けているくせに、銀時はいつだって何とも思っていないような顔で居てくれた。

「悪ィ」
「おう」
「…ってお前がしっかり拾っとかねェからだろーが!」
「ンな小せェモン踏んで転ぶお前の方が信じられねーよ」
「「不運小僧」」

後ろから声を揃えて言い放った後、部屋を出ていく桂と高杉の背中に本を投げつけ、次いで出ていく銀時の後ろから俺も部屋を出た。
別々の方向に向かって歩いて行く背中を眺めて、俺は一抹の切なさに囚われた。

どうして、こんな残酷なことをするんだろう。
いつか敵同士となるかもしれない忍者のたまご達を、一緒に住まわせて絆を作るだなんて。その情に流されず任務を行うことこそが、一人前の忍者になるということならば。
非情こそが、忍者ならば。

「銀時!」
「…ん?」

少し先を歩いていた銀時を呼べば、銀時は立ち止って振り返った。その眼差しが温かくて、俺の好きなもので。
この瞳を失うならば。俺の手で、銀時の命を奪わねばならない時が、いつか来るとしたら。

「早く来いよ、土方」
「ああ」

もうすっかり日が暮れた薄暗い空の下、銀時と二人で歩く縁側で、俺は誓った。
もし、隣のコイツを殺さねばならない時が来たら、俺はお前に殺されてやる。他の誰にもやらねェ命、コイツにだけは。
銀時の前では忍者じゃなく、俺自身で在りたい。
そう、三日月に誓った。

「忍者失格かもな、こんな…」
「…なら俺も」

俺の考えていることが銀時に分かるように、銀時の考えていることが俺にも分かった気がした。
お願いだ、どうか俺と同じ誓いはしないでくれ。




完。






書いた本人も曖昧ですが…。
伊作→土方
食満→銀時
仙蔵→桂
もんじ→高杉(!?)

もんじのあり得なさ(失笑)
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