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久々に小話!ですが…。

まさかのジャンル越えです。
知盛×土方です。笑っちゃうよ自分で!なんてモノを書いてんだ!
しかも死ネタです。
しかもしかも、薄桜鬼の羅刹設定です。

何かもうすごいネタです。シリアスです。ドシリアスです。
にしても知盛って難しいのな…!

なわけで色々ごちゃまぜなネタですが…。
苦情等はあの…出来ればお控え下さい…!
『死ぬ時、だな』

アイツの言葉が頭に浮かんだ。あの心地の良い低音が、すぐにでも溶けてしまいそうな脳を揺らす。

『死ぬ時は…自分は今、生きているのだと…感じられるだろう…?』

この言葉を聞いたとき、コイツは戦に狂っちまってるンだと思った。
日々怠惰な生活を送る無気力極まりねェヤツに、お前には生きる楽しみとやらは無ェのかと訊いてみたことがあった。
俺が戦って生きるのは、近藤さんの為だ。近藤さんをもっともっと上へ押し上げて、大将の喜ぶ顔が見たい。ただそんだけだ。
ならヤツは、知盛は一体何のために生きているのかと、ふと疑問に思っただけだった。
そうしたらそんな答えが返ってきて、俺は呆れながらもコイツらしいなと思ったものだ。

そんな俺が今、知盛と同じ事を感じている。
引き裂かれた腹は何故か治らねェ。どんな傷もたちどころに自動治癒しちまう、忌々しくも便利だった俺の体はもう、尽きようとしてるらしい。
一生分の能力を短期間に消費することによって、超人的な体力や治癒能力を発揮できる薬。それを自ら飲んだのも近藤さんのためだった。
昼間に歩き回ることが困難になっちまっても、気力で働いていた。血の芳しい香りに狂いそうになっても踏ん張って耐えた。それもこれも、皆すべて近藤さんのため。
薬を飲んで俺が羅刹と化したとき、知盛は何も言わなかった。戦いの中で傷つけ傷つけられ…そんなギリギリの命のやり取りを望む戦い方をする知盛のことだ、絶対に俺を蔑むだろうと思っていたが、そんな予想はあっさり裏切られた。
本当に何のリアクションもなかった。普段通り酒と肴を請い、酒をかっくらって寝ちまって、翌朝もいつもと変わらない態度だった。
だが今なら知盛のそんな態度も分かる気がする。
もし逆の立場だったら。知盛が羅刹になり、俺が人間のままだったら。
…何を言えばいいのか分からねェ。責めてーが、知盛が誰かの為に人間としての生を捨てたなら、責められるワケがねェ。

「…ーーー」

声にならねェ声で、アイツを呼んだ。命尽きようとしているこの瞬間、近藤さんでも総悟でもなく、知盛の顔が見たかった。
もう会えねェのは分かってる。俺はアイツを置いてこの戦場に来たンだからな。
死のうとしている。だからこそ俺は今、まだ生きていると感じられる今、会いたかった。

「!?」

諦めを抱いて瞬きを二度した後、木にもたれかかって全身を投げ出している俺の顔を覗き込むように、知盛が傍に立っていた。
銀髪は月光に煌き、俺が仕損じて逃がしちまった敵兵でも斬り殺したのか返り血は知盛の頬を赤く色づけていた。
赤が似合う男だ。知盛のことをそう思っていたが、細かく言えば赤じゃねェ、血が似合う男だったのか。

「とも、もり…ッ、何故っ」
「疼いた、それだけのことだ…」

疼く、それだけで知盛が何をしに此処へ来たのか分かってしまうくらいには、俺達は同じ時間を過ごしてきていた。
コイツが元いた世界でも戦はあったらしく、コイツは将軍という立場にあったらしい。根っからの戦好きなコイツは、俺が本陣待機を命じたにも関わらずその命を破り、人を斬りに戦場へ来たんだろう。コイツの疼く、というのはつまりはそういうことだ。
知盛は俺の隣に膝をつき、腹のデカイ傷に目をやった。時間が経っても治らねェ事で、俺の死期がもう間近なのを悟ったンだろう、知盛はおもむろに自らの腕に小太刀を走らせ、赤い血を流した。

「…必要か?」
「イヤ…もう、要らねェ…」
「飲んでみる価値は、あると思うが…な」
「…にんげ、んに…もどりてェんだっ」

羅刹が生きるためには血が必要だ。人間が食事を必要とするのと同じように。
だが俺はどうしても血を飲むという行為に慣れずに、吸血衝動が起きると必死になって耐えていた。そんなとき、決まって知盛は自らを傷つけ、その血を俺にくれた。俺の衝動が収まるまで、俺が生きるため。
知盛は俺と違ってすぐに治ったりはしねェのに、躊躇う素振りも見せずにいつも傷をつくる。それが申し訳なくて仕方が無かった。
コイツはまるで何でもないかのように振舞っていたけどな。

「と…、もり…ッ」
「何だ…?」
「悪か…た、な…。お前…の、せ、かい…」

海からやってきた知盛を保護し、コイツの言うところの「京」に帰してやるとの約束は、守れそうにねェ。総悟ももう死にかけらしいし…山崎、もいねェか。原田は…今頃何してんだか。
だが誰かがコイツの面倒を見てくれるだろう。

「構わんさ…。俺も、こうなってしまったのでな」
「!?」

先程俺のせいで傷がついた知盛の腕が、みるみるうちに治っていった。綺麗に傷が塞がり、もう跡形もなくなっている。そんな、まさか、なんで。
理由を訊きてェのに、もう言葉が出ねェ。口から出るのは血ばかりで、足先は既に灰となり散り始めている。
死体も残らねェ羅刹の逝き方。

「他人の為に刀を振るうなど…笑止千万。結局は誰も皆、ただ己の為に生きる。だが、お前は…」

知盛の冷てェ手が俺の頬をするりと撫でた。ただそれだけの仕草が妙に艶やかで。
俺を見つめる知盛の歪んだ笑みを霞みゆく目でただ見ているしか出来ねェ。

「…俺をこれほどまでに、熱くさせたのは…お前、ただ一人だ」
「(知盛、)」
「眠るといいさ…副長殿。幕府とやらの為でも…近藤の為でもない。俺は…お前の為に死ぬまで、戦ってやろう」

ごっそりと腹辺りが灰になって崩れたのが感覚で分かった。ずるずると頭も下に落ちて、やがてさらさらになっていく。
もう手もねェ。知盛に触れてェのに。何か伝えてェ。何を?

『…お前、名前は?』
『人に名を尋ねるのならば…先にそちらからお教え頂こうか』
『ンだとコラ。この隊服が目に入らねーのかテメェ。いいから答えろ』
『…性急な御仁だ。名乗り合うのは夜半になってから…でも遅くはないと思うが、な』

ああ、アレだ。あのとき、初めて会ったあの運命の日。
俺を茶化すような、それでいてどこか優雅さを秘めた物言いで俺を見たお前の目が。
あの瞬間から俺を捉えて離さなかったのだと、ずっと言いたかったはずだ。

「お前を、愛す。短き人生を光放ち生きる蛍の仄かな黄金のように、お前の灯火が消えたとしても…儚く散る六波羅の桜のように、お前の命が舞い散った後も…。俺の心は、お前のものだ」

最後の最後に長ったらしい台詞吐きやがって。最後まで聞けたのが奇跡だ、ったく。
何か可笑しくなって俺は笑った。知盛は目を閉じた。それを見届けて俺も目を閉じた。
そして俺は灰になった。溢れんばかりの幸せに包まれたまま。



土方十四郎の体を、知盛は真昼の海へと連れてきた。羅刹と化した知盛の体には、爛々と輝く太陽の光は毒以外の何物でもなかったが、知盛は日陰にも入らず波打ち際まで歩み寄る。
そして土方の体を、元は体だった灰を、風に任せた。
土方が灰になったあの夜に殆どの灰は飛んでいってしまったが、掌に乗るほどの灰は何とかかき集めることが出来た。
そよ風はゆっくりと少しずつ灰を海へと運ぶ。そして灰がほんの一つまみになったとき、知盛は灰を乗せている掌を握った。
羅刹になってからというもの、太陽を見ることさえ出来なくなっていた土方を、せめて死んだ後は…と昼の海へ流すと決めたのは知盛自身だ。だが、あと僅かに迫った土方との別れをどうやら惜しんでいるらしい…、知盛は自らの躊躇いをそう分析した。
そして自嘲する。自分が、誰かとの別れを惜しむだなどと、と。

「あの…お侍様、その灰が大事なものならば、どうかこれをお使い下さい」

知盛の様子をじっと見ていたどこかの女性が、そっと遠慮がちに小瓶を差し出してきた。知盛はそれを一瞥すると視線を海へと返し掌を広げる。灰は再び風に乗り、全てを海に運んだ。

「…そんなものは、必要ないさ…。俺がいつか近しい未来に死んだ時…、他の誰かが…奴の欠片に触れるなど…」
「欠片?」
「そうならぬ様、奴は全て…誰にも触れられぬ天へと還す。…心優しいお嬢さん。親切、痛み入る。その小瓶も、そなたのような麗人に使われる方が…幸せだろう。どうかお嬢さんの行く末に…八百万の神の祝福があらんことを」
「い、いえ…」

知盛の色気湧き立つ微笑に、女性は頬を赤らめて去っていった。彼女の気配が遠のいたところで知盛は大きくふらつき、よろめきながらも日陰に入る。
羅刹という存在を、知盛は密かに忌み嫌っていた。戦っても気持ちよく死ねない体の、どこが良いのかと。

「だが…悪くはない、な…」

知盛はそう呟いて目を閉じた。土方が抱えてきた痛みや苦悩を、同じように味わっていると思えば、それほど悪くはない。
それに寿命が短くなるのも好都合だった。
土方を失った胸の痛みを抱える時間が、短くなるのだから。
夜、目が覚めれば北へ行く。真選組の残党が北で結集し、未だ戦いを続けていると聞いたから。

ただ己の為に戦ってきた知盛が今、土方の為だけに生き、逝こうとしている。
知盛はふ、と笑みを浮かべた。
そんな自分も、悪くはないと。



はい終わりー!!長っ!!
あの、めちゃくちゃ楽しかったです。ジャンル越えって楽しいー!
ジャンルは越えるわ、また違うジャンルから設定借りるわでやりたい放題ですが、すごく楽しかったです。悲恋だけどな!
補足ですが、知盛はある日突然海から、銀魂世界の江戸へやってきました。知盛は壇ノ浦で望美ちゃんと戦い、死を決意して入水したんだけど何故か海が江戸に繋がってたみたいな。
そんで望美ちゃんにやられた後だから酷い怪我で意識もなく、発見者により病院へ搬送。と同時に偶然病院に来てた土方(と総悟)に、発見者が通報。通報って言うのかなコレ。とりあえず最近では見慣れない将軍姿だったし、何より海から来てるわけだから不審者極まりないのでね。
そんでもって一般市民にそんなこと言われちゃったので仕方なく、意識の戻った知盛に事情聴取ということで作中の会話というわけです。だからあの会話は病室での会話です(笑)色気も何もねーよ!
あ、ちなみにちなみに土方が病院に来てたわけは、ミツバさん死後のことで、病室のお金とか何やかんやを支払いに来てました。だから総悟も一緒なわけです。ミツバさん失ったあとだから余計に何か知盛の存在が土方にとって重要だったというか。
そして遙かの世界から来たという知盛の話を聞き、ひとまず屯所で預かりつつ知盛が帰れるように手段を探してたというわけです。知盛からすれば別に帰れなくても良いので、知盛自身は何もせずに屯所でぐだぐだしてました。たまに隊士の稽古に加わって皆をこてんぱんにしたり、総悟と手合わせしたり。
作中で知盛が土方のところへ来たのは疼いたからではなく、ホントは土方の部隊が壊滅状態にあるという報告を聞いたから飛び出してきたのです。変なところで素直じゃないとももりん(笑)
ちなみに羅刹へと変わることが出来る変若水は、以前に近藤から渡されてました。近藤さんが見つかって捕まる間際、「何かあればトシを守ってやってくれ」と渡されてました。そんで戦場に来て、案の定銃で撃たれて簡単にやられそうになっちゃって、飲んじゃいました。
…ところで敵って誰ですか(えェェェ!!)アレだよね、攘夷派とかそんなんだよね。

とまあそんな設定がありました。何か考えるの楽しくってついつい深く…。
この後、知盛は北へ行って真選組やらの幕府軍に加わり、土方の代わりに五稜郭まで行くという予定でした。そもそも土方が死んだのは…うーん、宇都宮あたりかな?そこらへんはあんま深く考えてませんでしたスイマセン。
極寒の地五稜郭で、知盛はあまりの寒さに冬眠してればいいよ(笑)
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