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「そういや京に行ってて忘れちまってたが、そろそろ真選組屯所が完成する頃じゃねーか。楽しみだな」
馬に乗りながら独り言をぼそぼそと零した真選組副長・土方十四郎は、その屯所が出来ている(と予想していた)場所に着いた途端絶望のあまりこう叫んだ。
「ひどくこざっぱりしてるゥゥゥ!!!」
そう、そこには屯所どころか建物建設中とも思えない程に何もなかったのだ。
思わず近くで工事の作業をしていた(と思われる)作業員を呼びとめる。
「ちょ、大工さん!これ屯所出来てると思えないんだけどォ!?」
「屯所ならまだまだですよ。だって副長さん、お金ケチってぼくひとりしか雇ってないじゃないっすか」
「いいだろ別に」
「いいですけど、完成まであと30年はかかりますぜ」
「えェェェ!?困るに決まってんだろそれ!もう出来てると思って山崎に招待状出しちまったじゃねーか!」
その招待状が郵便受けの中に入っていたことに気づき、それを開いた真選組監察・山崎退は面倒さを隠しもせずに表情に出した。
「えー!アホの副長からだ。なになに…?」
『アホの山崎へー。屯所が出来たぜー。ざまあみろー。お土産を持って来ーい。マヨ限定で持って来ーい。土方十四郎。PS.お風呂あがりに耳掃除をすると、湿ってるぜ』
「むかつく」
そのくだらないにも程がある上司からの手紙を、山崎は一言で切り捨てた。
「…屯所か。行かないと副長怒るだろーな…。ちょっと行ってすぐ帰って来よう。2秒くらい見て」
なんて山崎がため息をついているその時、土方はたった一人の作業員に刀を振り回して怒鳴っていた。
「いいから小屋でも何でも作れ!」
「小屋でいいんですか!?」
「急げ!明日までに作れよオラ!」
~翌日~
山崎はノロノロと気が進まない様子ながら、一応屯所までの道のりをゆっくり歩いていた。
「にしても副長に会うのは久しぶりだなァ。…あ、いっけね、お土産忘れた。草でいいか。小石も少々」
適当に小汚い巾着に近くの道端に生えている雑草と小石を詰め込んでおく。
「地図だとこの辺だよなァ、屯所」
そう言いながら周りを見渡すと、いかにもみすぼらしい小屋が一軒ぽつんと建っているのが見える。
「…これじゃないよな、まさか」
しかし、小屋にはしっかりと「屯所」という表札がかかっている。
「何か書いてあるけどこれじゃないよね、まさか。これが屯所なんて俺は信じないよ!?ここに副長がいたら信じるしかないけどさ」
「♪~ラララ~マヨ~マヨにとめどなき愛を~♪」
「いたァァァ!?なんか歌ってる!?ギターの位置低っ!」
音痴にも程がある歌声の先には、ギターを太ももの位置まで下げて歌っているアホな上司の姿があった。
土方は山崎に気づくと歌をやめ、ギターもといエアギターの演奏をやめず話しかけてきた。
「おう、よく来たな、待ってたぜ。弾き語りしながら」
「弾いてなかったっすよ!?」
「実は弾けねェんだよ。今日始めたばっかでな」
「それなのにそんなに誇らしげにぶら下げてるのォ!?」
「チッ、うるせーな。ったくよ」
山崎の容赦ないツッコミに土方は唇を尖らせ、しぶしぶと言った態でギターを肩から下ろすと、そのまま自分が腰かけていた丸太にギターを振り下ろした。
「ギターなんざ止めてやるよ!!」
「もう止めたァァァ!?」
大破したギターをそこらに放置し、ギターのことなどすっかり忘れたかのように土方は屯所のドアを開き山崎を招き入れる仕草を見せる。
「さあ入れ。出来たてホヤホヤの屯所だぜ。ちっと変なニオイするが、まあ入れ」
ひらひらと手を屯所に向け山崎を迎え入れようとした土方だが、ハッと何かを思い出した表情を見せると山崎の顔の前に手のひらを差し出し、動きをストップさせる。
「あ、待て。お土産は持ってきたんだろうな?」
「やっぱりいります?」
「当たり前だろーが!タダで屯所に入ろうなんざ図々しいにも程があるなオイ!片腹痛いわ!」
「じゃあどうぞ」
ものすごい勢いで怒り出した土方にうんざりとした様子で、山崎が巾着を差し出す。
「じゃあはい、どうぞ」
「俺はもうコレだけが楽しみで…」
うきうきとした様子で土方が巾着をさっそく開く。
中から出てきたのは、青臭い臭いと草、そして小石。
「お前…ッ!」
■
いやー、ほんとはフィッシュ様が出るまで書きたかったんだけど、力尽きました。途中で私何書いてるんだろうと我に返りました。
基本的に副長大好きな山崎が大好きなので、土方に冷たい山崎というのが新鮮で楽しかったです!
…芭蕉な土方と、曾良くんな総悟とかもいいよなーと思う今日この頃であります。