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「長期出張に行って来ます。私が帰って来るまでの間、理事長室の掃除は頼みましたよ、金澤先輩」

そう言い残してスーツケース片手に行っちまった吉羅の命令で、俺は毎週律儀に主のいない理事長室に通っている。
今日もまた一日の仕事を終えた放課後に、雑巾片手に俺は理事長室へと足を運んだ。
――そして、理事長室の前で、ノックをしようと右手を拳にしながらも、戸惑った挙句力なく右手を降ろした生徒の背中を見つけちまって、思わず足を止めた。
音楽科の制服に、肩に届く黒髪。そして何より理事長室くらいしかない閑静な廊下にやって来る生徒なんて、一人しかいない。
吉羅の恋人を表す名前を呼ぶと、弾かれたようにそいつは振り向いた。くしゃりと泣きそうに歪んでいた顔は、俺を目に映した途端に強引に笑顔へと変わる。

「……金澤先生」
「…吉羅のヤツ、遅いな。もうすぐ一ヶ月になるか」
「行く前から、今回は長引くって言ってましたから」

俺と話すより、まるで自分に言い聞かせているように、俺には聞こえた。
…ったく、まだ泣いてわーわー叫んでくれた方が、俺も慰めてやれるのに。そうやって隠されたら、その虚勢を暴くことさえ躊躇われて、余計に厄介だ。

「…入るか?」
「え?」
「今から理事長サマの言いつけで、中の掃除だ。手伝ってくれるか?」
「っ、はい!」

いくら俺より恋人が大切でも、一生徒に理事長室のカギを預けるわけにはいかない。
そして俺がここの掃除を仰せつかって一ヶ月。その間にこうして理事長室の前でばったり会うなんてなかったから、きっとこいつは一ヶ月ぶりに入るに違いない。
一瞬で目を輝かせて頷いた顔には、明らかな喜び。吉羅は学院内では理事長室に籠もることが多かったから、一番吉羅が染みついている場所に入れることが嬉しいんだろう。
カギを開けて中に入る。
俺も一週間ぶりに入るそこは、当然誰も出入りしていないからか俺が先週整頓したばかりの清潔さを保っていて、俺も隣の女子生徒も、顔を見合わせて思わず噴き出した。

「どこを掃除するんだってな」
「ふふ、本当ですね」
「ま、ここには学院一座り心地のいいソファがあるんだ。ゆっくりコーヒーでも飲むか」
「はい!」

いそいそと準備を始めるそいつに甘えて、俺は先にソファにどっかと腰を下ろす。
テーブルに多少の埃が積もっているが、まあ見なかったフリだな。
その内理事長室にまで届いて来たのは、放課後の時間を練習に費やす音楽科の誰かの音色。
華やかで朗々と響き渡るトランペットの音に、きっと同じ顔を思い浮かべたんだろう、カップの擦れる音を立てながら振り返った顔は微笑んでいて。

「火原先輩、最近忙しそうです」
「そうなのか?…あー、春節か」
「春節にまたイベントがあるんですよね。金澤先生も何かしらお仕事があるとか」
「まあな。王崎のヤツも来るらしいし、音楽科だけじゃなくて普通科でも動きがあるらしいぞ。ほら、なんて言ったか、普通科のよく目立つ……」
「不動先輩ですよね。確かお兄さんも春節に合わせてまた来られるとか」
「ああ、あいつは生徒との距離が近すぎるのがキケンなんだよなあ。ま、俺の知ったことじゃないが」
「……クリスマスも」

ふと楽しげだった声音がトーンを沈ませた。
微かに悲哀を乗せた声は、それでも何とか明るく響かせようとして口角を無理矢理上げて、それでもウソが苦手なのか、瞳は切なげに揺れている。

「…皆さんお忙しそうでした。月森くんも、土浦くんも、加地くんも、柚木先輩や、志水くんも。お正月には初詣に出かけてたみたいですし」

ああ、…寂しいんだな。
ずっとこの部屋を空けている主は、クリスマスにも正月にも、自分の誕生日にも姿を現すどころか、連絡一つなかった。俺に連絡がないだけかと思っていたが、まさかこいつにも電話一本寄こさなかったんだろうか。
これは、あいつが帰ってきたら説教だな。

「は、初詣なんぞ行くもんじゃないぞ?人が多いだけで、大吉もなかなか出ないしな、うむ」
「……でも、楽しそうで…」
「き、吉羅だって、忙しない春節が過ぎればすぐに帰って来るさ!」
「…でも春節が終わったら、次はバレンタインだし…。バレンタインが終わったらホワイトデーで…。理事長はそのイベントを成功させるために、また走り回るんじゃないでしょうか…」
「あ、あいつはあれでも理事長だからな!何かと忙しいだけで、でも時間が空いたら戻って来るに決まってるさ、お前さんの隣に」
「――もう、待ち疲れそうです」
「…そう言うなよ。吉羅が悲しむ」
「……大丈夫です、ちゃんと待ってます。理事長が一番好きだから」

同学年のやつらや、俺や王崎や教育実習生まで、誰かしらとイベントごとを過ごしている周りを見ながら、こいつは一人過ごしていたんだろう。姿の見えない、いつ帰って来るという連絡もして来ない、薄情な吉羅をただ待って。
それでもよそ見をせずに吉羅だけを待ち続ける背中は、確かにどこか疲れて見えた。
――吉羅、早く帰って来いよ。一生後悔するハメになっても、俺は知らんぞ。

「……理事長と、いつ会えるのかなあ…」

溜め息混じりに吐き出された呟きは、今にも泣きそうに震えて聞こえた。





fin.





吉羅は何故来ないんだァァァァァ!!!!!!
という怒りと悲しみでいっぱいですよ俺は!!!!!!絶対!絶対吉羅来ると思ってメンテ後にログインしたら春節とかウソだろォォォ!!!
クリスマスも誕生日も過ぎちゃったよオイ!!!バレンタインは!?バレンタインには来るよね!?ていうか春節と同時に来よう吉羅!!おいでよ早く!仲間入りしてよ!!
吉羅になら課金しまくるからお願いスタッフー!!!!枯れそう!あまりに吉羅不足で枯れそう!吉羅の新イベントとか新スチルとか期待しまくってるんだからァァァ!!!
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