忍者ブログ

02

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
□    [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。











はらはらと、霧に濡れた葉が風に乗り、地に落ちる。
その葉を無慈悲に踏みにじりながら、月光の届かない山深くへと走る足音は、二つ。

『逃げて下さい』

そう、言い残した人は、銃創から夥しい血を流しつつも不敵に笑い、大きな刀を手に戦場へと去って行った。去ってしまった。

『逃げて下さい。殿を頼みます』

最期の言葉が何度も脳裏をよぎる。飄々として、澄み渡って、綺麗で、勇ましく、潔く死を覚悟した男の眼差しだった。
あの人が好きだった。ずっとずっと好きだった。髪を撫でる武骨な手が好きだった。揶揄を飛ばす低い声が好きだった。
何よりも、恋人よりも大切なものの為に生きた心が好きだった。

息が切れて来た。ずっと走りっ放しだ。後ろをついて来る呼吸も辛そうで、ちらりと振り返る。
赤茶の艶やかな髪は血と汗と細かな霧に濡れ、青白い頬に張り付いていた。
右手に握る扇も真っ赤に染まり、具足は泥にまみれている。
瞳は、関ヶ原決戦完敗という残酷な現実に揺れ、震え、今にも透明な何かが溢れ出してしまいそうだった。

『逃げて下さい。殿を頼みます。大阪まで守り抜いて下さいよ』

左近様、三成様は今すぐにでも腹をお召しになりたそうにしか見えません。それでもあなたは逃げて再起を図れと言うのでしょうか。絶望に浸かり切った、この脆く細い肩に、まだ希望を無理矢理にでも背負わせようとするのでしょうか。
目より下を隠す黒い布が、じわりと涙で濡れた。この可哀想な敗北者を、大阪まで逃がした所で何の意味があるのでしょう。また次も負けたなら、何処まで逃がせばよいのでしょう。旧友と命を奪い合う非業に、何時まで翻弄させればよいのでしょう。
左近様。もういない。もういないのなら、命を破ってもよいでしょうか。

私は足を止めた。三成様が慌てて隣で足を止める。激しく呼吸を繰り返しながら、戸惑った眼差しで私を見つめた。

「っ…は……ッどう、した…?」
「三成様は、どうなさりたいのでしょうか」
「…?大阪へ、と…左近が、」
「三成様の願いは臣下の願い。ですが臣下の願いは三成様の願いではない」

三成様は言葉をなくした。紫色の唇が小刻みに震える。
追っ手の気配に木々がざわめいた。人数、六。徳川家の有する忍軍団だ。
まだ遠い。だけどすぐに追いつかれる。私のような一介の忍が、あの服部半蔵率いる忍軍団にいかほど太刀打ち出来ようか。
しかし、さほど大した問題ではない。

「三成様、どちらへ参りましょう」
「…俺、は…」
「何処へでも」
「……左近がおらぬと、俺もお前も迷い子か」

三成様がくしゃりと泣きそうに微笑んだ。いや、目尻から一筋、涙が零れ落ちた。

『逃げて下さい。殿を頼みます。大阪まで守り抜いて下さいよ。殿さえ無事なら、希望は潰えない』

潰えるのです。三成様の脈は正常に打っていても、左近様の脈が途切れてしまえば潰えるのです。泣いてしまうのです。迷ってしまうのです。立ち止まり、見失い、途方に暮れて、空を仰ぎ、喉を嗄らし、拳を握り締め、何度も何度も、左近様の最期の笑みを、何度も、思い出す。

三成様は目を赤くさせながら空を見た。この潰走が始まってから、ようやく今、普段の沈着さを取り戻していた。

「…最期に、大阪城を一目見たいと、思う。秀吉様の豪奢な城を、今一度」

三成様の願いに、私は頷くと白い左手を取り再び走り始めた。逃げる為に走っていたさっきまでとは違い、願いを果たす為に走る今は、酷く清々しい。
足取りも軽い。疲れも痛みも彼方へ去った。追っ手は更に近付いている。三成様も私も分かっていた。到底逃げられない。

私は不意に三成様の手を乱暴に引き寄せ、なだらかな傾斜を転がり落ちた。山道から逸れた獣道に落ち、三成様が呻く。
私は三成様の髪についた葉を払って、その身を起こさせた。そして自らの忍装束を脱ぎ捨てる。三成様が目を見張った。

「何をしている!」
「左近様の願いを、叶えます」

左近様は言った。その最期の声を一言一句漏らさず、私は声に乗せた。

『逃げて下さい。殿を頼みます。大阪まで守り抜いて下さいよ。殿さえ無事なら、希望は潰えない。…あなたに殿を託す意味、分かってますね?』

左近様、あなたが好きだった。朗々と恋人に死を促す非道ささえも。
私は顔を覆っていた布を取り払った。三成様の目が苦しげに歪む。三成様の瞳には、三成様と双子とも見紛う私の顔が映っていた。
肩につく赤茶の髪。冷酷とも言われる鋭い瞳。鼻も唇も肌の色も、性別を除いて、私は三成様と同じ。
左近様、私はちゃんと分かっていました。こういう時に三成様の影武者をさせる為に、あなたが私を側に置いていた事を。それでも構わないと思っていたから、私はこうして務めを全うしようとしているのでしょう。
ただし、私は結局あなたの望みを叶えられない。もうこれ以上、過酷な宿命に傷ついていく三成様を見ていられないのです。
だから私のこの顔は、三成様の新たな生の為に使う。左近様、ごめんなさい。でもきっと許してくれる。三成様を、命を懸けて逃がした左近様なら、きっと。

私の脱いだ装束を三成様に手渡す。三成様はうなだれた。山の獣も、戦の音に怯えて去った静寂の中で、私は一糸纏わぬ姿のまま、三成様の覚悟が決まるのを待つ。
やがて三成様の指先が自らの鎧を解き始めた。追っ手の足音が微かに耳に届いた。
服を交換し終えると、私は三成様の扇を握り締めた。指が冷え切っていて感覚がないと、今気付いた。

「三成様、無事に大阪城へ辿り着いたなら、そのままひっそりと生きて下さいね。決して投降などなさいませんよう。これから石田三成として命を散らす私が無駄になります故」
「………左近は、ちゃんとお前を愛していた」

三成様はその言葉を最後に、西へと山道を走り去った。なんて優しい台詞を残して下さったのでしょう。
その背を見送るとすぐさま、私は死ぬ方法を企て始める。
敵方に捕まっては性別から偽者と知られてしまう。遠目に私を石田三成と判別させ、しかし捕まる事なく、屍さえも彼等には渡さず、されど確実に死んだと分からせなければならない。

「……崖」

崖から落ちるのがいい。際で追っ手に追い詰められ、少しの抵抗を見せ私の外見をその目に焼き付けてから崖から落ちるのがいい。出来れば下は川がいい。流されてしまうのが一番見つからない。

「……左近…様」

あなたもこんな気持ちだったのでしょうか。果てのない暗闇へと歩み寄る、この恐怖。三成様が逃げる時間を稼ぐ為に重傷の体で戦場に立ったあなたは、いつものように鷹揚に笑っていたけれど、それはどんな感情を潜めていたのでしょうか。
左近様。もういない。私も、いなくなる。
追っ手が間近に迫る気配に、私はわざと足音を立てて走り始めた。
はらはらと、葉が落ちる。無慈悲に踏みにじった。











「……怖い夢でも見ましたか?」

左近先生のあったかな掌が、汗で額に張り付いた前髪を払ってくれた。ああ、私はぐっすり寝ていたらしい。
鮮やかな朱色で満たされた夕暮れの保健室。左近先生の皺くちゃな白衣に、私は抱きついて涙に濡れた顔を拭う。左近先生が困ったように苦笑した。
頭がぼんやりする。これは夢?それとも現実?

「学校ではくっつかないようにと、何度も言ってるんですがねえ」
「……死ぬ夢、見たの」
「死ぬ夢?」
「……死にに行く夢って言った方が正しいかも」
「それは怖いですね。でも大丈夫ですよ、あなたは二度と死にに行く必要などない」

左近先生の手が背中を優しく撫でていく。希望なんてない山中を、徐々に追っ手に追いつかれながら、恋人には影武者を頼まれて、散々な夢だった。胸がきりきりと締めつけられて痛い。
頭がぼんやりする。これは夢?それとも現実?

「左近先生、」
「どうしました?」
「左近先生は私のこと、ちゃんと好きですか?」

大きく逞しい体をぎゅっと捕まえて、左近先生の胸に頬を押し付ける。大好きな先生。いつから好きだったかしら。とりあえず大好きな人。髪を撫でる武骨な手が好き。揶揄を飛ばす低い声が好き。

「ちゃんと好きですよ。次は幸せにすると、決めていますから」
「次、は?」
「ええ」
「……前の彼女の話してる?」
「あながち間違っちゃいませんが、安心して下さい。俺は今も昔も、あなた一筋の男ですよ」

前の彼女の話とか持ち出しながら、今も昔もとか!
適当すぎる左近先生をじろりと睨むと、先生は動じた様子もなくへらりと笑った。
その笑顔が夢の中の左近様と重なって、私は焦って先生の手を掴む。
行かないで。
咄嗟にそう感じた。夢?現実?

「先生…」
「…まだ混濁してます?俺はしがない養護教諭ですよ。戦人じゃない」
「う、ん……」

どうして、夢の内容を知ってるの?
そう訊きたいのに急激に眠くなって、再びベッドに身を横たえつつ私は必死に重い瞼を開ける。
はらはらと、開けていた窓から葉が一枚、風に乗って入って来た。左近先生の手が慈悲深く、その葉を指先で愛でる。
もう起きていられない。またあの怖い夢を見るの?

「俺がいますよ。安心して眠って下さい。…辛い夢なんて、あなたは見なくても構いませんから」

左近先生の手が私の頬を撫でた。
不思議と、さっきの怖い夢は見ない気がした。良かった。絶望に沈む山の中で、独り、命の灯火を消す瞬間なんて、もう見たくない。

「……逃げましょうか。その夢から、今度は二人で」

左近先生の手が、迷い子の私を導くように伸ばされた。
ああ…今いるこの保健室が現実だ。左近先生の温もりが、そのとてつもなく幸福な事実を教えてくれる。
好きな人が側にいる。それは、とても奇跡なことなんだ。












fin.










前から関ヶ原敗戦後の逃避行は書いてみたいと思っていたんです。でもいざ書いてみたらあまりにダークだったので、救いになればと転生設定にしてみた!三成はちゃんと転生してるんだろうか(笑)
てか転生設定にしなかったら左近がただの酷いやつで終わってた。
しかしシリアス楽しいなー!
PR
まさかの美夜&暁彦夢。オチ?なにそれおいしいの状態。

固定ヒロイン設定で、美夜生存捏造のIF設定です。












『授業が終わったら理事長室へ来てくれないか?……姉が来ている』

そんな理事長からのメールが届いて、わたしは放課後になった途端に教室を飛び出して理事長室に向かった。
逸る気持ちを何度も深呼吸して抑えながら、理事長室のドアをノックする。

「誰かね」

すぐに室内からそう問われて名前を告げると、勢い良くドアが開いて思わず一歩後ずさる。
だけどドアを開けて下さったひとの柔和な笑顔に、わたしは一瞬で心臓を高鳴らせた。

「美夜さん…っ!」
「ふふ、お久しぶりね。相変わらず愛らしいわ」
「ご無沙汰しております!」

理事長のお姉さん…美夜さんは、頭を下げたわたしの肩にそっと繊細な手を乗せると、そのままふわりとわたしを抱き寄せた。
世界的ヴァイオリニストとして色んな国に飛び回っている美夜さんは理事長以上に多忙で、わたしもこうして会うのは数えるほど。
憧れの演奏家を前に、わたしは完璧に舞い上がっている。

「元気にしてたかしら?」
「は、はい!美夜さんは…」
「お姉ちゃん、って呼んでくれて構わないのに。暁彦といずれ籍を入れるんでしょう?」
「え!?」
「…姉さん、彼女を困らせないでくれ。それからいい加減離れて下さい。最後に、早く中に入りドアを閉める事」

苛立ちと困惑の境目にいるような理事長の表情。それは普段よりずっと幼く、素のように見える。
美夜さんはそんな理事長に上品に笑うと、わたしの手を引いて室内に迎え入れてくれた。
美夜さんのフレグランスが漂って、わたしの鼻をくすぐる。いつも、なんて素敵な香りなんだろう。
柔らかなアイボリーを基調としたワンピースは美夜さんの穏やかさを表していて、魅力的なオトナの女性なのに可愛らしさも併せ持っているのがよく分かる。
ソファーに座ってからもにこにことわたしを見つめている美夜さんの上機嫌っぷりに、わたしもついつられて笑顔になってしまって。
本当に、なんて可愛いひとなんだろう。

「美夜さん、いつ日本に?」
「数時間前なの。突撃訪問なんてしたら暁彦が怒るかなって考えたら、そうしたくなっちゃって」
「分かっているのに此処へ来たあなたが理解不能です」

美夜さんが緩やかなペースで話すと、理事長が淡々とそう返す。
いつも美夜さんが来ると殊更不機嫌になる理事長は、読んでいた書類をデスクに置くとわたしの向かい側のソファーに腰を下ろした。
そしてわたしの右手と繋がる美夜さんの左手を射抜き、くっきりと眉を寄せる。

「…姉さん、あなたが来る度に言っていますが、必要以上に彼女に触れないで頂きたい」
「あら、同性であなたの姉の私にまでヤキモチなんて、あっくんったら心が狭いのね」
「…その呼び方は止めて下さい」
「私はこの子とお話したくて来たのよ?あっくんは黙ってなさいっ」
「………」

コラ!とでも言うように美夜さんの人差し指が理事長に突きつけられた。…理事長の右手がぎゅっと拳を握ったのをわたしは見てしまった。
いつも何だかんだで理事長を黙らせてしまうあたり、美夜さんはさすがお姉さんなんだなあと妙な感心をしてしまう。

「とにかく可愛いわ…。こんな素直で純粋な子が暁彦の毒牙にかかっちゃったなんて…」
「わわ、み、美夜さん!」

ふと美夜さんの両手が伸びてきたかと思えば再び腕の中に閉じ込められて、あたふたと理事長を見やる。
理事長はあからさまに不快感を表情に滲ませていて。

「姉さん、此処は過度なスキンシップの不要な国ですよ。誰彼構わず抱き付くならば早くアメリカにでもフランスにでも行って下さい」
「ふふ。暁彦なんて放っておいて、私とディナーにでも行きましょう?」
「彼女の今夜は数日前から私が予約済みです」
「あら、前に会った時とシャンプーを代えたのかしら?良い香りね」
「姉さん!」

前髪あたりに頬をすり寄せられて、尊敬するヴァイオリニストであり理事長のお姉さんでもある美夜さんからのスキンシップにドキドキと緊張と喜びが膨らむ。
理事長が腹立たしげに声を張ると、ようやく美夜さんは理事長に目を向けた。

「邪魔なんて無粋よ、暁彦」
「あえてはっきりと言いますが、邪魔なのはあなたです」
「暁彦ったら、私にまでヤキモチを妬くのはやめなさい。そんなにこの子に愛されてる自信がないのかしら?」

美夜さんの挑発的な声音に理事長の眉が吊り上がった。…ああ…いつも美夜さんが来るとケンカになっちゃう…。
そして今回もまた、美夜さんのケンカを容易く買ってしまった理事長が威厳たっぷりに立ち上がった。

「…いいでしょう。彼女と私の間に姉さんが入る隙間などない事を証明してみせますよ」
「り、理事長?何を…」

不敵に笑った理事長が美夜さんとは反対側の隣に腰を下ろして、わたしは戸惑いながら理事長を見つめる。
理事長はわたしの左手を取ると、何と手の甲に口付けを落とした。

「なっ、り、理事長!?」
「君を一番愛しているのはこの私だ。君の最愛も当然ながら私、だろうね?」
「あ…え、えっと、それはもちろ、」

もちろん、と答えかけた口は右側から伸びてきた手に覆われて使えなくなった。
そのまま無理やり右側を向かされて、にっこりと微笑んだ美夜さんと目が合う。

「ふふ。困ってる顔を見ると更に追い詰めたくなっちゃうわね」
「(ええー!?)」
「いつか私と一緒に世界を周りましょう…暁彦抜きで。約束よ」

左右から向けられる台詞と熱い眼差しに、わたしはただただ困り果てるしかなかった。

「「さあ、どっちを選ぶ?」」











「…あの、どうしてそうも対立を…?」
「あなたを巡る――」
「――ライバルだから。に決まっているだろう?」
「(吉羅家に好かれる遺伝子でもあるのかな…わたし…)」









fin.










どうしてこうなった(笑)
ただ単に美夜お姉様に溺愛されたかっただけなんです。お姉様の趣味は暁彦くんをからかうことです。
とりあえず私なら美夜お姉様を選んで暁彦をしょんぼりさせたいです。で、その表情をお姉様と楽しみたいです。

美夜の捏造すみませんでしたー!いつかもっとがっつり書いてみたい!
「桜智さん、桜智さんっ(^^)/」
「っ、ゆきちゃん…!(´∀`*)ど、どうしたんだい…?そんなに慌てて…」
「あの、お誕生日おめでとうございますm(__)m」
「……え?(・_・;)」
「今日が桜智さんの生まれた日だから、ちゃんとお祝いしたいなって思ったの(*^_^*)……あれ、桜智さん?」
「…ああ、いや…キミが祝ってくれるなら…今年からは今日が誕生日にしようかな…(´∀`*)」
「……ということは、もしかして今日じゃないんですか…?(°°;)」
「昨年までは、十三日だったけれど…今年からは今日になったところだよ…(*^^*ゞ」
「……(..;)」
「……ゆきちゃん?ど、どうしてそんな悲しげな顔を…!(°□°;)」
「ごめんなさい…。誕生日を間違えちゃうなんて…(;.;)大好きな桜智さんの誕生日だから、張り切ってお祝いしようって思ってたのに…」
「……大好きな、桜智さん…。ああ…キミはなんて可愛らしいんだろう…(´∀`*)(´∀`*)(´∀`*)」
「…怒って、ないですか?(..;)」
「怒る筈が無いよ…。ゆきちゃんが私を祝ってくれる気持ちに、偽りは無いと伝わってくるから…(^_^)」
「桜智さん…ごめんなさい。ありがとう(*^_^*)大好きだよ」
「っっっ…!!ああ…生まれてきて良かったけれど…今にも昇天してしまいそうだよ…(≧∀≦)」










なんだこれ。
桜智の誕生日をずっと16日だと思ってた私がいましたよー。
ごめん桜智!!誕生日おめでとう!大好きだ!

読んだところで何の得にもならない、むしろ読むと後悔するような内容です。
なんか暗いです。あと土岐がちょっと狂ってる感じ。

本当に何も面白くないです。ただ衝動的に書いただけです。ごめんなさい本当にごめんなさい。










「なあ、出かけよか」

宛ても無く、お金も無く、わたしは土岐さんと寮を出た。
生温い夜風の支配する真夜中の事だった。
長距離を歩くのに向いていないサンダルに、部屋着のジャージとスプリングコート。
土岐さんの髪先に紐は無く、強めの風に揺れ惑っている。
中指と薬指だけが互いに絡まり、不格好な繋ぎ方のまま土岐さんはわたしを散歩に連れ出した。






月は満ちて、星は歌って、風は奏でる。
車のクラクションがパーカッション。
コンビニの前で騒ぐ集団の声は混声合唱。
夜風にさやさやと葉を擦る木々のざわめきは弦楽器。
人生謳歌中の蝉の鳴き声がブラボーと叫ぶ、深夜のオーケストラ。
土岐さんは何の音も鳴らさず、かといって無な存在でも無く、夜の非現実的な雰囲気から浮いたまま、足を進める。
昼の似合わない人は、かといって夜も似合わなかった。昼はこの人の儚さを打ち消しちゃうほど眩し過ぎて、夜はこの人を闇路に誘い込んでしまうほど危う過ぎる。
わたしが中指と薬指を繋いでいなければ、流星群の端っこに混じって燃え尽きてしまいそうな。

…そんな事を考えながら、わたしは土岐さんの顔を斜め後ろから見つめる。土岐さんは一度もこっちを見ない。






喉が渇いた。だけどお金を持ってない。
足が痛い。だけど土岐さんの足は止まらない。
歩いて歩いて、汗が額を流れ落ちる。水分が体から失われていく。
息が切れてきた。土岐さんの足は止まらない。
目眩がする。土岐さんの足は止まらない。

「土岐さん」

あまりに辛くて呼んでみた。それは空が少しずつ赤くなってきた夜明けだった。
足元にかかる冷たい波に、ここが砂浜だと知った。目眩が酷くて何も分からない。

「土岐、さ」

もう一度名前を呼んだ時、ついにわたしは膝から力を抜かした。傾く体を土岐さんが受け止め、そのまま二人して砂浜に倒れ込む。
やっとこっちを向いた土岐さんは穏やかに、達成感を剥き出しに笑っていた。呼吸の荒いわたしの前髪を払い、コンディションの悪さから涙するわたしの目尻を拭ってくれる。

「顔色、悪いで」
「たぶん、脱水症状です」
「足も…擦り切れて血出とるやん」
「スニーカーで来れば良かったですね」

水分を欲しがり砂漠化した喉がひりつく。
目を開けている体力すら無くなっていて、わたしは視界をこの世界から断然した。
視界が無くなって、足を規則的に濡らしていく波と、左半身には砂の感触。
あと一時間も此処にいたら干からびて死んじゃう。心底そう思った。

「俺が連れ回したからやな」
「です、ね」
「あんた、何も言わんから、途中からあんたの幻と散歩しとんかと思っとったわ」
「ほんものです」
「そやな。あんた、俺と一緒におってくれたんやな」

土岐さんの声がか細く震えた気がして、わたしは鉛より重い瞼を上げた。だけど目を開けても真っ暗で、これはダメだと諦める。
土岐さん、ちゃんと前にいる?わたしのそばにいる?寂しくなって怖くなって、わたしはぐしゃぐしゃに泣いた。

「土岐さ、ん。土岐、さん」
「ここにおるよ。ちゃんとおる」

土岐さんの手が現在進行形で濡れゆく頬に触れた。頭がぐわんぐわんと揺れる。今すぐ水が欲しい。

「なあ、俺があんたの幻と海に消えてしまわんように、ちゃんと俺の手、握っといてや」
「土岐…さん…?」
「水欲しいやろ?足痛いやろ?眠くなって来たんちゃう?俺が全部助けたるから、俺だけ見とって」
「……岐…さ…」
「……あんたが好きなんよ。側におらん本物より、側におってくれる幻と死にとうなるくらいに」

深夜のオーケストラ。朝になってそのステージが幕を下ろす間際に、その舞台をわたしに見せてくれた土岐さんがやっと参加した。
ピッチの狂ったサイレントヴァイオリン。
淋しく痛々しく血を流して泣き叫んだその音色を子守歌に、わたしは世界とさよならした。












「おはよう」

次にわたしが目を覚ますと、そこは土岐さんの使っている菩提樹寮の部屋だった。
時計は既に正午を過ぎていて、土岐さんはベッドに横たわるわたしを見ながら団扇で自らを扇いでいる。

「……夢…?」
「そろそろ起きて、練習サボったことを如月くんに言い訳した方がええんとちゃう?携帯、鳴りっぱなしやったよ」

土岐さんが目の前にわたしの携帯を突き出す。不在着信が七件。…また律くんに怒られちゃう。
重い右手を動かして携帯を受け取りながら、ふと自分の体から香った潮風に、夢じゃないと気付く。

「土岐さん」
「ん、どしたん?」
「寂しがらせたことと、ヤキモチ妬かせちゃってごめんなさいでした」
「もう勘弁してや?俺が不機嫌になったらエライ目に遭うって身に沁みて分かったやろ」

土岐さんが苦々しく笑った。そんな土岐さんに左手を伸ばすとすぐに引っ張り起こしてくれる。そのままぎゅっと抱き締められながら、わたしは不思議な夜のお散歩を思い出した。




ああ、なんて魅惑的な狂想曲。










fin.









本当にすみませ…!土岐さんが壊れててすみません!ただ単に奴はひなちゃんに放置プレイ食らって寂しくてヤキモチ妬いてただけなんですすみません!
ただそうなった時の行動が常軌を逸してるってとこを書きたかっただけなんですすみません!どうしても土岐さんってナイーブでどっかが欠落してるようなイメージが拭えないんだよなあ…。
で、そんな土岐さんを選んだひなちゃんもどっかが壊れちゃってるってのも書きたかったんですすみません!

きっとこのあとひなちゃんに無理をさせた土岐には榊さんが長々と説教することでしょう(笑)



好き勝手書いた結果、楽しかったです!(笑)
 氷河さんにオススメのキス題。シチュ:教室、表情:「気恥ずかしそうに」、ポイント:「髪に触れる(or触れられる)」、「自分からしようと思ったら奪われた」です。 http://shindanmaker.com/19329 #kissodai



だそうです。なんてときめくシチュ!!
この結果が出た時、すぐに思い浮かんだ相手で書きます。はい、冥加です。

とても短文。で、冥加がエセすぎます。冥加ってどんなやつだっけ…。前髪の形しか思い出せないよ。
忍者ブログ/[PR]

Template by coconuts
カレンダー
01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
リンク
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[07/20 霜月]
[06/19 霜月]
[05/20 霜月]
[03/21 霜月]
[03/11 霜月]
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
氷河心
性別:
女性
バーコード
RSS
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
アクセス解析