読んだところで何の得にもならない、むしろ読むと後悔するような内容です。
なんか暗いです。あと土岐がちょっと狂ってる感じ。
本当に何も面白くないです。ただ衝動的に書いただけです。ごめんなさい本当にごめんなさい。
「なあ、出かけよか」
宛ても無く、お金も無く、わたしは土岐さんと寮を出た。
生温い夜風の支配する真夜中の事だった。
長距離を歩くのに向いていないサンダルに、部屋着のジャージとスプリングコート。
土岐さんの髪先に紐は無く、強めの風に揺れ惑っている。
中指と薬指だけが互いに絡まり、不格好な繋ぎ方のまま土岐さんはわたしを散歩に連れ出した。
月は満ちて、星は歌って、風は奏でる。
車のクラクションがパーカッション。
コンビニの前で騒ぐ集団の声は混声合唱。
夜風にさやさやと葉を擦る木々のざわめきは弦楽器。
人生謳歌中の蝉の鳴き声がブラボーと叫ぶ、深夜のオーケストラ。
土岐さんは何の音も鳴らさず、かといって無な存在でも無く、夜の非現実的な雰囲気から浮いたまま、足を進める。
昼の似合わない人は、かといって夜も似合わなかった。昼はこの人の儚さを打ち消しちゃうほど眩し過ぎて、夜はこの人を闇路に誘い込んでしまうほど危う過ぎる。
わたしが中指と薬指を繋いでいなければ、流星群の端っこに混じって燃え尽きてしまいそうな。
…そんな事を考えながら、わたしは土岐さんの顔を斜め後ろから見つめる。土岐さんは一度もこっちを見ない。
喉が渇いた。だけどお金を持ってない。
足が痛い。だけど土岐さんの足は止まらない。
歩いて歩いて、汗が額を流れ落ちる。水分が体から失われていく。
息が切れてきた。土岐さんの足は止まらない。
目眩がする。土岐さんの足は止まらない。
「土岐さん」
あまりに辛くて呼んでみた。それは空が少しずつ赤くなってきた夜明けだった。
足元にかかる冷たい波に、ここが砂浜だと知った。目眩が酷くて何も分からない。
「土岐、さ」
もう一度名前を呼んだ時、ついにわたしは膝から力を抜かした。傾く体を土岐さんが受け止め、そのまま二人して砂浜に倒れ込む。
やっとこっちを向いた土岐さんは穏やかに、達成感を剥き出しに笑っていた。呼吸の荒いわたしの前髪を払い、コンディションの悪さから涙するわたしの目尻を拭ってくれる。
「顔色、悪いで」
「たぶん、脱水症状です」
「足も…擦り切れて血出とるやん」
「スニーカーで来れば良かったですね」
水分を欲しがり砂漠化した喉がひりつく。
目を開けている体力すら無くなっていて、わたしは視界をこの世界から断然した。
視界が無くなって、足を規則的に濡らしていく波と、左半身には砂の感触。
あと一時間も此処にいたら干からびて死んじゃう。心底そう思った。
「俺が連れ回したからやな」
「です、ね」
「あんた、何も言わんから、途中からあんたの幻と散歩しとんかと思っとったわ」
「ほんものです」
「そやな。あんた、俺と一緒におってくれたんやな」
土岐さんの声がか細く震えた気がして、わたしは鉛より重い瞼を上げた。だけど目を開けても真っ暗で、これはダメだと諦める。
土岐さん、ちゃんと前にいる?わたしのそばにいる?寂しくなって怖くなって、わたしはぐしゃぐしゃに泣いた。
「土岐さ、ん。土岐、さん」
「ここにおるよ。ちゃんとおる」
土岐さんの手が現在進行形で濡れゆく頬に触れた。頭がぐわんぐわんと揺れる。今すぐ水が欲しい。
「なあ、俺があんたの幻と海に消えてしまわんように、ちゃんと俺の手、握っといてや」
「土岐…さん…?」
「水欲しいやろ?足痛いやろ?眠くなって来たんちゃう?俺が全部助けたるから、俺だけ見とって」
「……岐…さ…」
「……あんたが好きなんよ。側におらん本物より、側におってくれる幻と死にとうなるくらいに」
深夜のオーケストラ。朝になってそのステージが幕を下ろす間際に、その舞台をわたしに見せてくれた土岐さんがやっと参加した。
ピッチの狂ったサイレントヴァイオリン。
淋しく痛々しく血を流して泣き叫んだその音色を子守歌に、わたしは世界とさよならした。
「おはよう」
次にわたしが目を覚ますと、そこは土岐さんの使っている菩提樹寮の部屋だった。
時計は既に正午を過ぎていて、土岐さんはベッドに横たわるわたしを見ながら団扇で自らを扇いでいる。
「……夢…?」
「そろそろ起きて、練習サボったことを如月くんに言い訳した方がええんとちゃう?携帯、鳴りっぱなしやったよ」
土岐さんが目の前にわたしの携帯を突き出す。不在着信が七件。…また律くんに怒られちゃう。
重い右手を動かして携帯を受け取りながら、ふと自分の体から香った潮風に、夢じゃないと気付く。
「土岐さん」
「ん、どしたん?」
「寂しがらせたことと、ヤキモチ妬かせちゃってごめんなさいでした」
「もう勘弁してや?俺が不機嫌になったらエライ目に遭うって身に沁みて分かったやろ」
土岐さんが苦々しく笑った。そんな土岐さんに左手を伸ばすとすぐに引っ張り起こしてくれる。そのままぎゅっと抱き締められながら、わたしは不思議な夜のお散歩を思い出した。
ああ、なんて魅惑的な狂想曲。
fin.
本当にすみませ…!土岐さんが壊れててすみません!ただ単に奴はひなちゃんに放置プレイ食らって寂しくてヤキモチ妬いてただけなんですすみません!
ただそうなった時の行動が常軌を逸してるってとこを書きたかっただけなんですすみません!どうしても土岐さんってナイーブでどっかが欠落してるようなイメージが拭えないんだよなあ…。
で、そんな土岐さんを選んだひなちゃんもどっかが壊れちゃってるってのも書きたかったんですすみません!
きっとこのあとひなちゃんに無理をさせた土岐には榊さんが長々と説教することでしょう(笑)
好き勝手書いた結果、楽しかったです!(笑)
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