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◆罪人×聖女

お相手→ニクス
※公式主人公








果てのなき闇。広々とした宇宙空間に点在する幾つもの惑星。そこに暮らす数え切れない程の命。
美しく瞬く星から、道端に転がる小石まで、この宇宙に存在する全てに恵みを与える女王の背負うものは、あまりに大きくて、ニクスにはただ傍にいつも寄り添い、その重圧と戦う彼女を支えるしか出来ない。

今もまた、三日三晩に渡る祈りの果てに、とある惑星を荒らした大災害を鎮めた女王が、その結果を見届けた直後に倒れたのを、介抱するしか出来ないのだ。




ベッドに横たわる彼女は、顔色も青く、やや痩せたように見える。彼女の力により聖地へと共にやって来たニクスだが、女王の使命を僅かでも肩代わりする事は不可能なのだ。
独りで宇宙を守るという責任を引き受ける、この可憐な少女を、ただ見守る事しか出来ない、無力感。
ニクスはベッドに寝かせた白い手を、そっと握って自らの唇を押し当てた。

「我が女王…、私の愛しい人。…その底の無い慈愛の心が、あまりに美しくて」

あまりに美しくて、心配が止まない。心配で気が狂いそうだと、ニクスは溜め息を吐く。
深い深い愛情を宇宙育成に注ぎ、その為に自らの犠牲を厭わない彼女だからこそ、ニクスは恋に落ち、守りたいと思った。
エレボスを身に宿した敵のニクスをも、その慈愛の精神で救った少女。計り知れない罪を重ねたニクスに、少女は生きても良いのだと説いたのだ。

安らかに眠り続ける若き女王。三日も休まず祈りを捧げていたのだから、もうしばらくは眠ったままだろう。
彼女が目を覚ました時の為に、食事を作っておこうか。それとも浴室に熱い湯を?
この愛しい恋人のためなら、なんだって出来る。彼女の望みは全て叶えよう。

「ですが今だけは、あなたの愛らしい寝顔を見つめ、この不埒な唇を寄せる事を、どうかお許し下さい」

心配で、恋しくて、不安で、愛しているから。
触れずにはいられないと、ニクスは少女の手の甲にキスを落とした。
上質なシルクのナイトドレスから覗く細い腕に。
袖を捲って肩にも。
首筋から鎖骨に、また首筋に戻って頬から鼻の頭、瞼にさえ。ニクスは淀みなくキスの雨を降らせる。

「…あの…恥ずかしいです…ニクスさんっ…」

少女が遠慮がちに目を開けたのは、丁度ニクスが柔らかな唇にキスしようとした時だった。
ただ眠っていただけ。そうは分かっていても、彼女が無事に目を覚ましたとなり、内心ニクスは安堵する。
だがそんな感情は少女に気を遣わせるだけだと隠し、ニクスは優雅に微笑んだ。

「おやおや…いつから起きていらっしゃったのですか?私の口付けを受けたくて、ずっと眠ったふりを?」
「そ、そんなんじゃ!ただ起きるタイミングを掴めなくて、つい…」
「冗談ですよ、美しい眠り姫。あなたの目覚めにお付き合い出来た幸福に、私の胸は打ち震えています」
「もう…ニクスさんは大袈裟なんですから」
「信じて頂けていないようで残念ですが、ひとまずは…。おはようございます、マドモアゼル」

おかしげに小さく笑う様は幼く見えて、ニクスも笑いながら彼女の唇にキスをした。
一瞬離れて、また口付ける。そんな事を四度続けるとさすがに苦笑されて。

「ニクスさん、何だかいつもより甘えん坊ですね」
「…申し訳ありません。静かに眠るあなたがあまりに神々しい聖女のようで、傍らに佇む私はその輝きに惹かれるばかりの暗き罪人。自らの罪を吐露し、聖女に受け止めて頂きたい心地に陥り、ついあなたの清廉なお体に手を伸ばして体温を――」
「も、もういいですっ!分かりました!」

いつしか彼女の顔は真っ赤に染まり、焦り果てている。少し、言葉を重ね過ぎただろうか。だが全て本心なのだから仕方ない。
ニクスは素直に身を引き、ベッドから出る少女の肩に淡い水色のブランケットを掛けてやる。
アルカディアにいた頃よりずっと心身共に成長した彼女は、数段魅力的になった笑顔でニクスに礼を述べた。

「ありがとうございます、ニクスさん」
「ああ…どうかその極上の微笑みを容易く私に見せないで。天使と見紛うあなたの笑顔は、それを見る者の心を奪い、虜にするだけで飽き足らず、支配という甘美な鎖で――」
「ニクスさん!!…もう知りませんっ」

今度こそ少女は恥ずかしさからか眉を寄せ、多少の怒りと共にニクスを睨み付けた。
そして疲れなど感じさせない足取りで部屋を出て行く。
開け放たれた窓から吹く風に乗り、揺れる水色の髪。艶を失わないその髪先に触れてしまいたいが、今はこれ以上やると本気で怒らせそうで。

「待って下さい、マドモアゼル。あなたにモーニングティーを振る舞う栄誉を、どうぞ私に」

ニクスは後を追って部屋を出た。
少し先を足早に行く、小さな、しかし尊い背中のみを見つめて。
きっと死ぬまで、自分はこの背を追いかけ、守り続けるのだろう。遠い遠い存在の女王の背中を、いつまでも。
だが、前を歩く少女が朗らかに振り向いてくれるから。

「はい!ニクスさんの紅茶は美味しくて大好きなんです」

無力感に負けずにきっと、どれ程離されようと諦めずついて行けるのだろう。
ニクスは少女の言葉に心から湧き上がる愛しさを笑みに乗せ、そっと抱き寄せた。










fin.






途中でニクスを書いてるのか柊を書いてるのか分からなくなりました。
ネオアンジェの続編早く出ろーぃ!

ヒロインはアンジェリークですね。
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