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◆将軍×見習い兵士

お相手→ナーサティヤ









未だ日中というのに黒き太陽のために薄暗い根宮。その回廊を颯爽と歩く白い背中に、私は駆け寄った。
静かな怒りを抱いて。

「ナーサティヤ様!」
「………」

ナーサティヤ様はぴたりと足を止め、首だけで振り返る。無表情なお顔。冷たい瞳が、わたしを貫いた。
その視線に自然と身が竦む。けど、ここで退いてはダメだ。わたしはギュッと拳を握ってナーサティヤ様をまっすぐ見上げた。

「っあの、七日後に出陣する軍の陣容を拝見しました」
「…そうか」
「なぜナーサティヤ様直轄の第一軍に、わたしの名がないのでしょうか!?」

ナーサティヤ様の軍はいくつもの中隊に分かれていて、わたしは光栄にもナーサティヤ様直々に指揮する第一軍の副官を常に務めていた。
そして七日後は、貧困に喘ぐ民の起こした叛乱を鎮めるための出陣。特にいつもの陣容を変更しなくちゃならない理由なんてないはずなのに…。

「わたしが何か大きな失態を?それとも他に何か特別な理由が?」
「私の決断に間違いがあると言いたいのか?」
「ナーサティヤ様がなぜ私を第一軍から第五軍に配置替えしたのか、その理由が気になるだけです!」
「副官から第五軍隊長へ昇格したのだ。何が気に食わぬ?」

ナーサティヤ様は眉一つ動かさずに答える。わたしの大声が広々とした回廊に響いて、行き交う文官達も何事かとこちらを見ているのに、その視線も気にされていないようだ。
きっとわたしがここで喚いても、ナーサティヤ様からすれば羽虫が傍で飛んでいる程度の認識しかないんだろう。わたしなんて、ナーサティヤ様から見ればとても些末な存在に過ぎないんだ…。

ずっとナーサティヤ様に憧れて、殿方に混じって鍛錬を続けてきた。
ナーサティヤ様の傍に居たくて、お力になりたくて学問にも力を入れた。
副官に任じられた時は天にも昇る喜びで、戦場がいくら恐ろしくとも、ナーサティヤ様が居たからこそ乗り越えられたのに。
ナーサティヤ様には、そんなわたしなどいなくても構わない。わたしではない者が副官だろうと、全く問題なくて。

悔しくて、悲しくて。わたしは声を更に荒げた。

「第五軍隊長よりも、わたしにとってはあなたの副官で居られることが何より名誉なことです!!隊長になるために戦ってきたんじゃない!」
「………」
「ナーサティヤ様のために頑張ってきたんです!ナーサティヤ様のためならわたしは――ッ!?」

感情が高ぶるのを止められず、怒りや悔しさに任せて叫んでいたわたしの唇に当てられた、…ナーサティヤ様の細い人差し指。
驚いて、はしたなく口をぽかんと開き言葉をなくしたわたしに、ナーサティヤ様はやや困惑気味に眉を顰めた。

「…騒がしい女だ」
「も、申し訳、ございません…」
「お前が傍に居ると指揮や戦闘に集中出来ぬ。だからお前を離れた第五軍に配置したのだ」

やれやれと何やら諦めたようにナーサティヤ様は首を振って、わたしから手を離す。触れられた唇がまだ熱い…きっと頬も真っ赤になってしまってる。
文官達の好奇な視線から逃れるべく、ナーサティヤ様によって、わたしは高い天井を支える太い円柱の影に押しやられた。ナーサティヤ様の腕が顔のすぐ傍に立てられる。
前に立つナーサティヤ様があまりに近くて、恥ずかしさのあまり引こうとするも背中はぴったり柱にくっついている。
ドギマギなわたしなんて無視で、ナーサティヤ様は端正な瞳をわたしに向けた。
妙な威圧感に息を呑んで、でもさっきの言葉には黙ってられない!

「わたしが足を引っ張っていたということですか!」
「違うな。私がお前を恋しく思い、それ故に戦闘中、私情を挟んでしまうという事だ」
「…………はい!?」

声音も平坦、表情に色はなく、でも告げられた台詞はどう聞いたって愛の告白だ。
耳を疑うしかなく素っ頓狂な声で聞き返すと、ナーサティヤ様はやっぱり何でもないという様子で。

「だから、お前が命を落とさぬか、怪我を負わぬかと心配に駆られて戦闘に集中出来んと言っている」
「……えっと…ナーサティヤ様…?」
「だがお前の力量は買っている。俺が居なくとも確実な指揮を下せると信頼し、第五軍を任せようと考えたが…嫌か」

嫌、なのかどうかなんて、今のわたしに判断出来ると思っているのだろうか。あまりに嬉しくて、感激に泣きそうなのを頑張って堪えてるわたしに。
そんなわたしの必死さに気付いたのか、ナーサティヤ様はふっと目元を緩めた。わたしには、笑ったように見えた。

「…泣くな。対応に窮する」
「は、はい…っ」
「…だが確かに、近くにお前の姿が見える方が良いかも知れん。離れていてはお前の危機を救うどころか、気付く事も出来まい」
「わ、わたしも!ナーサティヤ様のお側で共に戦いたいです!あなたをお守りするために、わたしがいるんですから!」
「……三度は言わんぞ。騒がしいと」

ナーサティヤ様が、今度こそ微笑みと分かる表情になった。注意も刺々しいものじゃなくて。
人差し指ではなく、ナーサティヤ様の口付けで唇を塞がれながら、わたしは素直に瞼を閉じた。









fin.



ネタ自体はすぐできたのに誰で書くかで悩みました。結果、前から書いてみたかったサティで!サティ難しかった…!

今作のヒロインは熱血!楽しかった!まあ…見習い兵士設定はどっかいっちゃいましたが(笑)
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