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コロコロと舌の上であめ玉が滑る。
パチパチと弾ける炭酸ソーダの爽やかな味が口内に広がって、とても美味しい。

「何を食べているのかね?」

ふと隣の運転席から尋ねられて、わたしは夜景の流れていく窓から左へと顔を向けた。
ちょうど大型レンタルショップの青い看板の眩しい光が理事長の端正な横顔を照らした。

「あめです。火原先輩にこの間いただいて」
「そうか。彼はよく菓子を口にしているようだね」
「新製品とか季節限定商品なんてあったら、まず買ってると思います」

理事長は迷いなくハンドルを切って車はわたしの家へと走って行く。
なんてことない会話。だけど、内容よりもっと大切で暖かな何かをキャッチボールしているような、そんな、別れ際の他愛ない会話。
理事長の声は淡々としていて、今もまたわたしの言葉に微かな笑みを浮かべ「まるで子供だな」と呟いた。
車内にはわたしお気に入りの弦楽器アンサンブルの曲が流れていて、クーラーの温度は少し高めの28度。
いつかクーラーが25度だった時に一瞬だけ寒さに腕を擦ったわたしに、理事長がさりげなく温度を上げてくれてから、車内はいつだって28度だ。
助手席のシートの位置もいつだって同じ。狭すぎず広すぎず、ぴったりだ。
乗るたびに、わたしに適した空間になっていく理事長の車。お礼を兼ねていつか一緒に掃除させて欲しいと言ったら迷惑だろうか。

「私にも一つ貰えないかね?」
「え?」
「その飴だ」
「あ、は、はいっ」

ひらりと理事長の手のひらが横から差し出されて、わたしは慌てて膝の上に置いていたカバンを開く。
そこでとある事実を思い出して、つい眉を八の字に描いた。

「どうしたのかね?」
「すみません…今わたしが食べているのが最後だったんです」
「そうか。それは残念だ」
「本当にすみません…」

火原先輩にはいくつか貰ったんだけど、もう全部食べちゃったんだった。ああもう…、どうして残してなかったんだろう。

「いや、君がそんな顔をする必要はない。それに……好都合だ」
「え?」

理事長の口角がゆるりと上がる。いかにも愉快そうな笑みと共に車が徐々にスピードを落としていって。
やがて交通量の多い大通りの脇へと一時停車された車。理事長がおもむろに自分のシートベルトを外したのを見てわたしは戸惑った。

「降りるんですか?」

理事長は悪戯な笑みを深くしただけで答えない。キーに手を伸ばしくるりと回して完全にエンジンを切った。
クラシックも冷房も切れて途端に静かになる車内。車のすぐ近くを走り抜けていったバイクの音がやけに乱暴に聞こえた。

「理事長…?」

尚も理事長は笑みを湛えたままこちらに上体を近寄せてきて、縮まる距離にわたしは背後のドアへとガタリ、逃げた。未だシートベルトに縛られたままの体に自由はさほどなく、ベルトが軋む。

「り、理事長っ、近いような、気がします!」
「そうだろうな」

あっけらかんと返され、理事長の左手が優しく右頬に添えられる。あめ玉がごろりと、緊張しきった口の中で転がった。
細くキレイな親指の爪先がつ、と下唇をなぞっていく感触がくすぐったくて背筋が震えた。

「…最後の飴、か」
「……?」
「まあ、お決まりはあえて外しておくとしよう」

理事長の言ってることが分からなくて首を傾げると頬に触れていた手があっさり離れていく。じわりと、小さくなってきたソーダの味が舌に広がった。
シートベルトが理事長の手によって手早く外され、ドアのロックが解除される音がした。

「好都合というのは、君とまだ共に居られる口実が出来たという意味だよ」
「口実ですか?」
「君をまだ帰したくないと思っていた。だから、少しコンビニにでも寄って行かないかね?」

理事長の指がこつんと、わたしの肩を越えて背中側にある窓を軽くつついた。
その先には大通りに面したコンビニが。

「その飴を買いに行きたい。付き合ってくれたまえ」
「…はい!行きます!」
「ほう、乗り気のように見えるが」
「わたしも、その、まだ一緒に居たいから」

窓の向こうに流れていく景色を眺めながら、ひっそりと抱いていたワガママ。理事長と一緒だったんだと知ると驚くほどに自然と唇から零れた。
――理事長も嬉しそうに微笑んだから、言って良かったんだよね?

「では行こうか」
「はい、理事長」

いつもよりちょっと遅い帰りになるかも知れない。お母さんに咎められるかも知れない。だけど少しだけ、寄り道をさせて欲しい。
いつの間にかなくなったあめ玉。
きっと十分後には新しいあめ玉を舐めているだろう。
理事長と二人で選んだ、甘いあめが。











fin.











イベントまでもう一週間ないー!と思ったら書きたくなった吉羅でした。お決まりのアレとはまあ、アレですよね。「最後の一つ?ああ、それならその一つを貰おうか」ですww

ああうああああイベント早く行きたいー!!夕夜を!私に早く夕夜を!(笑)
イベント行く前に遙か5の配信イベントも終わらせたいな。まだ青龍と朱雀と都しか終わってないよ!りょーまさんが凄まじくけしからんかったよ!


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