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『ミューズに捧げるラブソング』

志水夢。ほのぼの甘。
※また後日、名前変換有りにして夢ページに移します!





つい二時間前、可愛い後輩から「森林公園に来て下さい」という突然のメールが届いた。
何か用事かと尋ねるも教えてくれず、何も分からないままとりあえず香穂子は待ち合わせ場所の森林公園へやって来たのである。
だが香穂子としても、呼び出された相手、志水には用があったので突然の呼び出しにもうきうきでやって来たのだが。
何といっても今日はクリスマスイブだ。クリスマスといえば去年のクリスマスコンサートを思い出す。
演奏曲、観衆からの盛大な拍手、そして…コンサート後に受けた、志水からの告白。
思い出すとつい顔が緩んでしまい、香穂子は慌てて引き締めた。

「香穂先輩」
「志水くん!」

ふんわりと名前を呼ばれ、ベンチに座っている志水に気付いた。志水は立ち上がって緩やかな笑顔のまま香穂子に歩み寄ってくる。
…何となく足元がふらふらしているように見えたが、志水は普段からこうなので心配せずともいいだろう。

「先輩、朝早くから突然すみませんでした。眠いですか?」
「眠くないよ、大丈夫。心配してくれてありがとう」

心配するところが何とも彼らしくて、香穂子は笑いながら礼を言った。
志水も柔らかな笑顔を浮かべ、おもむろに香穂子の左手を握ってベンチに歩き出す。
マイペースなのが志水桂一という少年なので、香穂子はいちいち驚きも抵抗もしない。慣れたものだ。
志水はベンチにすとんと座り、香穂子が隣に座ったのを見届けると手を離した。
置いていた自分のカバンを探り始める。香穂子は何の説明も受けないまま待つばかりで。
志水はやがて数枚の紙を取り出した。

「先輩、今日はクリスマスイブです」
「そうだね、おめでとう」
「…?めでたいのかは分かりませんが、この日に先輩とこうして会えたのは、とても嬉しいです。でも僕はイブじゃなくても、先輩に会えた日はいつも嬉しいです」

志水はさらりと、聞いてて照れてしまうような事を言う。例に漏れず、今も頬を染めた香穂子をぼんやりと眺めているだけで。

「…ありがとう、志水くん。私もだよ」
「そうですか。それで本題なんですけど」
「あ…はいはい」

ほんのり良い雰囲気になったかと思えば、さらっと流されて香穂子はがくりと肩を落とした。そんな香穂子に気付かず、志水は数枚の紙を香穂子に差し出す。
それを受け取ると、それは既に音符が書き込まれている五線紙だった。

「これは…?」
「間に合わないかも…って思ってたんですけど、間に合いました。焦るといい曲は書けないし…でも今日に間に合わせたくて」
「…てことは、志水くんが書いた曲なの?」
「そうです。先輩にプレゼントしたくて。クリスマスプレゼントです」

香穂子は言葉をなくした。…まさか、プレゼントが貰えるなんて考えてもいなかったのだ。
貰いたくなかった訳ではもちろんないが、音楽一筋な志水はきっとクリスマスなど興味がないだろうと勝手に思っていた。
しかもこれ以上ないほどに極上のプレゼントだ。
香穂子はしばらく呆けたあとに、心からの喜びのまま満面の笑みを見せた。

「ありがとう!とても嬉しいよ!すごく嬉しい!」
「……ありがとうございます。そんなに喜んでもらえるなんて、思わなかったです」

香穂子のあまりの喜びように目を丸くした志水も、つられたように笑顔になった。

「先輩のことを考えてたら浮かんだ音楽を、形にしたんです。だからその曲は先輩のなんです。とても清らかな曲になりました」
「清らか…なんて恥ずかしいな…」

清らかなんて言われたことがない。くすぐったくて、香穂子は頬を掻いた。
志水は穏やかにそんな香穂子を見つめながら話を続ける。

「本当は…ちょっと緊張してました。喜んでもらえなかったらどうしようって。でも良かったです」
「嬉しいに決まってるよ!ホントにありがとう」
「でも良くないです」
「何が!?」

良かったやら良くないやら、彼と会話するのは大変だ。ツッコミスキルが磨かれる。
志水はむう…と気難しげに眉を寄せた。

「チェロを忘れました。すぐにその曲を聴いてもらおうと思ってたのに…残念です」
「じゃあまた今度にしよう。次に会う時の楽しみが増えるでしょ?」
「なるほど。そうですね。先輩、次はいつ会えますか?なるべく早く会いたいです」

早く会いたいと恋人に言われれば、受験生の身であろうと多少無理をしたくなる。
バッグからスケジュール帳を取り出し都合の良い日を探していると、唐突に志水があっ、と声をあげた。

「どうしたの?」
「残念なお知らせです、先輩」
「なに?冬休みは都合悪い?」

つい昨日から学院は冬休みに入ったばかりだ。受験生である以上頻繁には会えないが、それでも時間を作って志水と会うつもりだったのだが。
しかし志水は、普段より数倍とろんとした目を香穂子に向けた。

「眠いです…。耐えられません」
「なんですってー!?」
「昨日の夜…曲作りに没頭してたら…いつの間にか朝で…寝て、なくて」

ごしごしと瞼を擦る仕草は何とも愛らしいが、せっかくイブのこの日に朝から会えたというのに、寝られては困る。
だが志水が無理をしたのは香穂子の為で…ならば休ませてあげるのが先輩としての優しさだろうか。
香穂子は苦笑しながらも志水のふわふわな金髪をぽす、と撫でた。

「それじゃ今日は帰ろっか。また後日、ゆっくり会おう?」
「…いやです。困りました」
「何が?」
「眠くて…でも、先輩と一緒に居たいです。先輩と離れたくないです」

今すぐにでも夢の世界へ旅立てそうな様子なのに、志水は必死に抗っていた。
寝たいなら屋上だろうと校門だろうと眠りこける志水を知っているので、睡魔と戦ってくれている姿に思わずときめいてしまって。

「…じゃあ、家来る?私の部屋でゆっくり寝て、目が覚めたら遊びに行こうよ」
「先輩の…家…。ご両親…菓子折り…」
「要らないから!気遣わないでいいよ!」
「…じゃあ、行きます。先輩のお部屋」

志水はゆっくりと立ち上がった。朦朧としているのかふらふらしている。
その肩を支えて、ふと志水の顔が更に遠くなっていることに気付いた。また背が伸びたらしい。
いつの間に、こんなに大人びたんだろう。天使のような可愛らしい後輩は、今やすっかり成長した恋人で。

「先輩、大丈夫です…。お部屋に入っても、何もしません」
「うん…心配してないよ」

とことんマイペースなのは変わらないが。
だがそんなところが大好きなんだと、香穂子はそっと笑みを零した。
部屋についたら彼に贈ろう。用意していたクリスマスプレゼント…彼専用のアイマスクを。




fin.



志水をがっつり書いたの初めてかも。偽物でスイマセン!

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